「配偶者控除」の終着駅〜壁の乱立にご注意! 2016/12/29

配偶者控除について何度か取り上げましたが、思ってもいなかった、あるいはある程度は予測がついた? 決着を迎えたのでまとめを書いておきましょう。

2017年度の与党税制改正大綱が決まり、2018年1月からの「配偶者控除」の見直し案が固まりました。最初は廃止するとか「夫婦控除」の導入とか言っていましたが、何の事はない、103万円の壁がちょいと後ろにずれた感じの着陸となりました。

「配偶者控除」は、専業主婦が共働き世帯よりも多かった1961年に導入されました。もともと「配偶者控除」とは、配偶者の年収が103万円以下なら、世帯主の年収から38万円を控除できるので、所得税が軽くなるというものです。

103万円を超えると差し引き金額が減り、企業の家族手当もなくなる可能性があるので、103万円を超えない働き方を選ぶという意味で、「103万円の壁」と言われてきました。「1億総活躍社会」ではこの壁をなくして、存分に働いてもらうことが期待されていました。でも結局は「150万円の壁」として「配偶者控除」は残ることになります。

では年収「150万円の壁」を超えるとどうなるのか。というと、控除の満額は38万円ですが、急に手取りが減らないように、9段階で徐々に減っていき、201万円を超えると控除額はゼロになります(表参照)。

しかも困ったことに実は壁は150万円までに2つも存在しています。1つは2016年10月に新たに築かれた「106万円の壁」。厚生年金の加入者を増やすことを目的に501人以上の企業で働いているパートに社会保険料の支払いが生じました。今後は中小企業も対象になりそうです。

そして以前からある壁として、社会保険料を支払わなければならない「130万円の壁」です。つまり「103万円の壁」はなくなり「150万円の壁」になったものの、その前に社会保険料を支払う2つの壁があるということです。これって進んでいるの? 後ろ向きに進んでる?

まだ壁はあります。もう一つの新たな壁は世帯主の年収です。世帯主の年収が1120万円を超えると控除額が3段階で減っていき(表参照)、1220万円を超えると配偶者の年収に関わらず控除はゼロになります。このような世帯は約100万世帯あると言われています。この壁は「150万円の壁」を作るための壁(財源)です。

まとめてみましょう。

(1)配偶者控除が満額受けられるのは、世帯主の収入が1120万円以下で、配偶者の収入が150万円以下の世帯。

(2)フルタイムで働く夫婦世帯は現状維持で何の恩恵もなく、専業主婦世帯が優遇される状況が続く。

(3)フルタイムよりもパートに恩恵があるので、「1億総活躍社会」というのは「みんなパートになろう!」とも受けとれる。

(4)配偶者の収入が150万円以下だとしても、世帯主の収入が1120万円を超える世帯は増税になるので、高所得世帯からは税金を取ろうという姿勢がくっきり。

結論。「女性が活躍する」には何層もの壁を突き破るほどのパワーか念力が必要なようです。

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岐阜大学教育学部教授・博士

京都市生まれ。ノートルダム女子大学(京都)文学部卒業。大阪市立大学大学院生活科学研究科後期博士課程修了。

現在、岐阜大学教育学部教授・博士(学術)、放送大学客員教授。

家庭経済学、家庭経営学、家族関係学、アーミッシュ研究等の講義を担当。

放送大学ではラジオで「生活経済学」の講義を担当(2012〜2016年)。

主な著書 『ちほ先生の家計簿診察室』(名古屋リビング新聞社2002年)、名古屋リビング新聞社、大阪リビング新聞社で家計簿相談を20年ほど担当。

『お金と暮らしの生活術』(昭和堂2012年)、『仕事・所得と資産選択』(放送大学教育振興会2008年)、『アーミッシュの謎』(共訳、論創社1996年)、『アーミッシュの学校』(共訳、論創社2004年)、『アーミッシュの昨日・今日・明日』(共訳、論創社2009年)、『生活経済学』(放送大学教育振興会2012年)など。

趣味:毎日家計簿をつけること。ただし買い物好きなので家計チェックは自分にはあまり生かせていないかも・・・・・

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