達人に訊け!
重文が3体も安置される岐阜市「乙津寺(鏡島弘法)」 2019/7/17
岐阜県岐阜市の乙津寺(おっしんじ)。通称「鏡島弘法(かがしまこうぼう)」や「鏡島の弘法さん」や「梅寺」と呼ばれている。毎月21日は、弘法大師のご縁日「弘法さん」で大勢の人が訪れて賑わう。
東海三十六不動尊霊場 第31番札所。美濃三弘法札所 第3番札所。美濃四国札所 第44番札所。美濃三十三観音 第19番札所。
弘法大師・空海が梅の杖を立ると、その杖が梅の木となったという。その何代目かの梅の木が、納経所前にある。この梅の木が別名「梅寺」の由来。
乙津寺は、昔「乙津島」と呼ばれていた島で、738年(天平10年)に、行基が十一面千手観音を彫って安置したのが始まりと言われている。
813年(弘仁4年)、弘法大師・空海が乙津島にやってきて、龍神に向け鏡をかざしたところ、周りの海が桑畑に変わったという。このことからこの地を「鏡島(かがしま)」と名づけ、翌年に真言宗乙津寺を建立したとされる。
1540年(天文9年)、洪水の被害を受けお寺が荒廃する。
1545年(天文14年)、鏡島城主が再興し、そのとき臨済宗妙心寺派に改宗された。
1945年(昭和20年)、空襲により建物の殆が全焼する。本尊などの仏像などの重要な物は、すぐそばの長良川に運び出され、難を逃れた。
1958年(昭和33年)に大師堂などの建物が再建された。その大師堂の天井画は、大正時代に活躍した日本画家の堂本印象画伯(文化勲章受章)の描いたすばらしい龍の絵がある。
大師堂には、弘法大師・空海の42才の自作と伝承されている像が安置されていて、毎年4月21〜23日のみご開帳される。教王護国寺(東寺)と平間寺(川崎大師)と共に日本三躰厄除弘法の一寺とされているということで、「日本三躰厄除弘法大師」の石碑が立っている。
その大師堂の前の拝殿の上の方には、よく見ると木で彫られた鯛の彫刻が掲げられていて、珍しい。
大師堂の後ろには四国八十八ヶ所霊場の砂と石像が安置並べられていて、そこを歩くと四国八十八ヶ所霊場を歩いたのと同じご利益がえられるとされる「新四国八十八ヶ所霊場」もある。
1953年(昭和28年)に再建された国宝安置殿(本堂)には、国指定重要文化財の「毘沙門天像」と「十一面千手観音像」と「韋駄天」が並んで安置されている。
記帳すれば拝観可能。ただし仏像の前にガラスがあるが、近づいて拝観できる。毎年4月21〜23日 の御開帳には、ガラスが取り外された状態で拝観できる。
毘沙門天立像は、木造 像高160,6cm、平安時代作。高い位置にあるためか、すごく大きく感じる。厳しいお顔をされ、守ってもらえそうで頼もしい。
十一面千手観音(千手観音)は、一木造、漆箔、像高は109,4cm、平安時代作とされる。
まっすぐにすくっとお立ちになっている。衣の彫りは浅い。左右のたくさんのお手で救ってくださりそうだ。
韋駄天立像は、寄木造、彩色、玉眼、像高78,8cm、鎌倉時代作。目、鼻、口が顔の中央に寄っている。若々しく頬がはり、キリッとして凛々しいお顔。甲冑を身に纏い、合掌した両手で宝棒を捧げるお姿。
なんと、この韋駄天の兜は取り外しすることができるそうで、以前博物館に展示するのに運び出す際に兜を取り外した姿をご覧になったご住職によると、フサフサとしたオールバックの髪型だそうだ。でも、もう外すことはないそうで、残念。
合掌した手の間からは、なにか異変があると油が吹き出るそうで、よく見ると手だけテカテカ黒光りしている。
国宝安置殿(本堂)を向かって左に進むとお釈迦様がくつろいだ姿で横になっている白い涅槃像が安置されている。胸があって、女性的でなんだか色っぽい。
毎月21日と最終金曜日には、金色の弘法大師が描かれた金の御朱印が授与される。
前回の岩屋寺と続くが、乙津寺のご住職もイケメン💕です。
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鏡島弘法(かがしまこうぼう)・乙津寺(おっしんじ)
住所:住所岐阜市鏡島中2丁目8−1
電話:058-252-2062
アクセス:JR岐阜駅(7番乗り場)または名鉄岐阜駅(3番乗り場)から「G51西鏡島」行バス乗車。「鏡島弘法前」下車徒歩2分/JR東海道線の西岐阜駅下車、北へ徒歩約20分。
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プロフィール
仏像イラストレーター&文筆家
丸の内はんにゃ会(女子の仏教サークル)代表、奈良市観光大使。
子供の頃、仏像好きの叔父に連れられ奈良や京都の仏像を見て歩く。
大人になりひさしぶりに京都の三十三間堂に行き、突然仏像へ恋に落ちる。
以来、全国の仏像に会いに行くようになる。
そして、仏像本や仏像講演やカルチャーセンターの講師をするようになる。
著書には
「仏像、大好き!」(小学館)
「拝んでしあわせ奈良の仏像100」(西日本出版社、「田中ひろみの勝手に仏像ランキング」(メディアイランド)
「クイズで入門 日本の仏像」(講談社+α文庫)、「美しき仏像」(ぶんか社)
「ふらりおへんろ旅」(西日本出版社)
「江戸東京再発見 ぶらりスケッチ散歩」
など35冊。
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