南十字星は何処 2015/5/15

星が好きになると一度は見たくなる「南十字星」。とても優美な十字形をしている

風薫る5月。おとめ座が南の空でくつろぐころ、地平線の少し下で南十字星が南中する。星が好きになると、一度は見たい南十字星、サザンクロス……なんと南国情緒溢れる響きか。日本(本土)からは見ることが難しいだけに、なおさら想いが募る。

南十字星、正式には“みなみじゅうじ座”といって、4つの星が十字をつくる全天で一番小さな星座だ。1598年オランダの天文学者ブランシウスがつくり、1679年にフランスのロワイエが、ケンタウルス座の股の間で宝石のように輝く十字のあまりの美しさに、改めてケンタウルス座からその部分を切り取って正式に星座にしたという。星が好きになると絶対に見たくなり、一度見たら忘れられないほど優美で荘厳な姿をしている憧れの星座。

南十字星は、南の方角を指し示す重要な目印だが、ニセ十字星は南を指し示していない

南十字星とニセ十字星
夜空に輝く4つの星を適当に結べば、十字星なんていくらでもできる。事実、南十字星の隣には、ほ座の2つの星とりゅうこつ座の2つの星で、りっぱな十字架ができる。本物よりひとまわり大きくて目立つので、私もフィリピンで見上げた初めての南天の星空で、うっかり南十字星とまちがえてしまった。

オーストラリアやニュージーランドの観光ガイドも、平気でこの十字を南十字として説明するとか。しかし昔の船乗りは、これを南十字星に対してニセ十字星と呼んでいた。いったい本物とニセモノのちがいはどこにあるのだろうか。

北半球では、北の方角を示す星として北極星が重要視されるが、実は本物の南十字星は、クロスする南北の二つの星の間隔を南へ4.5倍伸ばすと、ちょうど北極星の反対側に当たる天の南極に到達するのだ。

ここには北極星に相当する南極星はないが、南半球では船乗りにとって南十字星はちゃんと南の方角を指し示す星として、重要だったのである。ところが、ニセ十字星は南を指していないまぎれもない偽物なのだ。もし南十字星とニセ十字星を見間違えると、とんでもない方向に航海することになって、後悔することになるわけ。

南十字星は、日本国内沖縄の那覇や小笠原の父島でも、水平線スレスレに見える

南の国のシンボル
南十字星は、南の国のシンボル的存在だ。オーストラリア、ニュージーランドはもちろん、パプアニューギニア、サモア、ブラジルも南十字星を国旗にあしらっている。

南国の象徴“みなみじゅうじ座”は、からす座が南中するころにそのずっと南で南中する。オーストラリアのシドニーでは、高度65°に見え、ハワイでは10°程の高さに見える。

では、日本からは全く見えないかというと、そんなことはない。沖縄の那覇や、小笠原諸島の父島では、水平線スレスレに見ることができるし、一番北の星だけなら、紀伊半島の南端潮岬、四国の室戸岬や九州の長崎より南の、水平線が見えるところなら見ることができるはずだ。

みなさんも南の国に旅をしたとき、ぜひとも憧れの南十字星を見つけてみてはいかがだろう。きっと幸せな気持ちになれる!

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天文研究家

1953年三重県四日市市に生まれる。学生時代は名古屋市科学館山田卓先生の下で天文普及活動に参加。天体望遠鏡メーカーに勤務の後、1992年にフリーとなり星を見上げる楽しさを広めるべく、あさだ考房を設立。

天文・科学雑誌に記事を連載、単行本・プラネタリウム番組シナリオ執筆のかたわら、天文宇宙関連の講演・講座、プラネタリウム解説を行っている。

最近は、生涯教育を意識した、プラネタリウム運営支援、プラネタリウム解説指導にもかかわっている。日本天文学会会員、NPO法人アイ・プラネッツ理事長。

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