冥王星の謎が解き明かされるPart2 2015/7/19

探査機ニューホライズンズが7月12日に撮影した冥王星の姿

冥王星発見者クライド・トンボー生誕100年に当たる2006年1月19日に打ち上げられ、9年6ヶ月もの歳月を経て、探査機ニューホライズンズは、今まさに冥王星の素顔に迫ろうとしている。

このニューホライズンズが打ち上げられた年の8月、冥王星に大異変が起こった。それまで惑星の座をゆるぎないものにしていたはずの冥王星が、準惑星と呼ばれるようになったのだ。

2003年に撮影された写真から2005年に発見された冥王星の外側を回る準惑星エリスの想像図

冥王星はなぜ準惑星に?
「太陽の周りを回る惑星は?」と聞かれたら、太陽から近い順に「水金地火木土天海冥」つまり、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星・冥王星の九つというのが今までの常識だった。そのころはどのような天体を「惑星」と呼ぶのか、国際天文学連合ではとくに定めていなかった。

ただ、九つの惑星のうち、冥王星だけは「軌道が17度も傾き、大きく歪んでいる」「直径が水星の半分以下である」という点で、水星から海王星までの惑星とは少し成り立ちが異なっていた。

また、1990年代になると観測技術の進歩により、海王星より外側で様々な天体が発見されるようになった。そのため、国際天文学連合では、惑星の定義についての検討が始まったのだ。そして1990年代後半には、冥王星を小惑星番号10000番に割り当てようという案が、国際天文学連合内で提案されたりもしている。

そんな状況のなか、2000年代に入ると、海王星以遠の領域には次々と大型の天体が見つかり始め、ついに2005年7月29日、冥王星より大きいと考えられる天体2003 UB313(エリス)が発見されるに到った。

2006年に国際天文学連合総会で採択された惑星の定義に基づいた新しい太陽系天体の分類

これらの発見によって「惑星とは何か」という議論が再燃することになったのである。そして2年近い討議と特別委員会での検討がなされ、3年ごとに開かれる国際天文学連合の2006年度の総会で、惑星の定義についての決議が行われた。

その場で最初に出された案では、惑星とは「じゅうぶん大きな質量を持つために自己重力が固体としての力よりも勝る結果、重力平衡形状(ほぼ球状)を持ち」「恒星の周りを回り」「恒星でも、また、惑星の衛星でもない」天体、と定義しようというものだった。

また、惑星をclassical planetとdwarf planetに分けた。この定義に従うと、水星から海王星までの8つがclassical planet、冥王星・セレス(ケレス)・カロン・2003 UB313(エリス)がdwarf planetとなる。つまりこの案では、現在の惑星の数は12個になり、dwarf planetは今後も増え続けることが予想される。

ところが、この案には多くの批判があったため、討議が続けられ、最終的に次のような惑星の定義が採択された。

1. 太陽系の惑星とは、「太陽の周りを回り」「じゅうぶん大きな質量を持つために自己重力が固体としての力よりも勝る結果、重力平衡形状(ほぼ球状)を持ち」「その周囲から(衛星を除く)他の天体を排除した」天体である。

2. 太陽系のdwarf planetとは、「太陽の周りを回り」「じゅうぶん大きな質量を持つために自己重力が固体としての力よりも勝る結果、重力平衡形状(ほぼ球状)を持ち」「その周囲から他の天体を排除しきれていない」「衛星でない」天体である。

3. 太陽の周りを公転する、衛星を除いた、上記以外の他のすべての天体は、Small Solar System Bodiesと総称する。

この採択された惑星の定義によると、冥王星・セレス・2003 UB313(エリス)等は、dwarf planetとして、惑星とは区別されることになった。日本語では準惑星ということになる。

冥王星の直径は、地球の1/5程。また冥王星の衛星カロンは冥王星の1/2もある

冥王星の大きさ
冥王星の見かけの明るさは14等級。見るためには、口径30cm以上の望遠鏡が必要となる。冥王星はどの惑星よりも小さく、地球の月と比較しても直径は2/3、質量は1/5以下であり、太陽系の惑星を回る衛星、ガニメデ、タイタン、カリスト、イオ、月、エウロパ、トリトンより小さい。

また、2003年に発見された太陽系外縁天体のエリスよりも小さい。これが冥王星が準惑星となるきっかけのひとつとなった。

冥王星の衛星
冥王星には、5つの衛星が回っている。最も大きいのは1978年に発見されたカロンで、冥王星の半分ほどの直径がある。2005年にニクスとヒドラが、2011年にはケルベロスが、2012年にはステュクスが発見された。

冥王星の大気と組成
冥王星ははっきりとした濃い大気は持っていないが、太陽に近づくと、主に窒素、メタン、一酸化炭素の希薄な気体が冥王星を包む。しかし冥王星が遠日点へと公転していき太陽から離れると、大気の大部分は凝固して地表へと降下する。

ハッブル宇宙望遠鏡の観測から、冥王星の表面は異常に不均一であることがわかった。冥王星の表面のカロンに向いた側はメタンの氷が多く、反対側は窒素と一酸化炭素の氷が多い。

冥王星も、他のエッジワース・カイパーベルト天体(外縁天体)のように、彗星と似た特徴を持っている。つまり太陽風によって冥王星の表面の物質はゆっくりと宇宙空間に吹き飛ばされていて、もし太陽に接近すれば、彗星のように尾が発達すると考えられている。

冥王星をかすめて飛びながら観測するニューホライズンズの想像図

こんな波乱にとんだ歴史を持つ冥王星が、惑星形成前段階の星を意味する「準惑星」と呼ばれるようになった2006年は、トンボー生誕100年に当たる年でもあった。そんな激震が走る直前の2006年1月12日に発見者トンボーの遺灰を乗せた探査機ニューホライズンズが打ち上げられた。

そしてこの7月14日に9年の歳月をかけて冥王星に最接近。なんとも冥王星とトンボーとの運命的なつながりを感じられずにはいられない。

きっとニューホライズンズによって冥王星の謎が解き明かされるであろう。

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天文研究家

1953年三重県四日市市に生まれる。学生時代は名古屋市科学館山田卓先生の下で天文普及活動に参加。天体望遠鏡メーカーに勤務の後、1992年にフリーとなり星を見上げる楽しさを広めるべく、あさだ考房を設立。

天文・科学雑誌に記事を連載、単行本・プラネタリウム番組シナリオ執筆のかたわら、天文宇宙関連の講演・講座、プラネタリウム解説を行っている。

最近は、生涯教育を意識した、プラネタリウム運営支援、プラネタリウム解説指導にもかかわっている。日本天文学会会員、NPO法人アイ・プラネッツ理事長。

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