<第20話>平成の大横綱 金字塔への道(1) 2015/8/8

今年の名古屋場所で35度目の優勝を飾り、史上最多の優勝回数をさらに更新し続ける平成の大横綱白鵬。いかにして金字塔への道を歩んだのか、その強さの秘密を5回に分けて、迫りたいと思います。

今でこそ、身長192センチ、体重160キロと恵まれた体格の白鵬ですが、来日当時は170センチちょっとに、68キロときゃしゃでした。
ほとんどの部屋に入門を断られ、ウランバートルに帰る切符を用意してもらい、失意の帰国をする寸前だったのですが、モンゴル出身の先輩旭鷲山にもう1部屋行ってみたらと勧められ、現在の宮城野親方(元竹葉山)に拾われたような形で角界入りをしました。
出世する力士は「何かを持っている」とよく言われますが、宮城野親方の慧眼だったと思います。旭鷲山の願いを聞き入れ、「とにかく連れてきてみなさい」ということだったのです。
序ノ口デビュー場所は負け越しからのスタートでした。

スポーツの世界で「一度身体を絞って、もう一度太ってくると本物になる」という定説がありますが、大相撲の世界こそ、その言葉が生きているのです。
例えば、入門したときに体重が100キロあったからといって、そのまま大きくなるわけではありません。10キロ、20キロ絞り込んで、初めて先が見えてくる。いかにもお相撲さん向きだと言われて入門し、痩せたなと言われたら先が見えてきたと考えた方がいいのです。大相撲を長年見てきて、共通して言えることです。

大鵬も柏戸も入門したときは100キロに満たなかったのですから。痩せたなと思ってもけっして悲観することはありません。白鵬は一見ひ弱そうに見えても、やはりある時期、身体を絞り込んで、今のような体格になっていきました。痩せないやつは出世できないと言ってもいいのです。

学生出身の輪島は例外ですが・・・学生横綱で即通用するような体でしたから。
話が逸れますが、輪島と名古屋場所といえば、思い出されるのは、名古屋の観光ホテルを宿舎代わりにし、リンカーンに乗って場所入りしていた逸話です。入門当時から異端児でした。まだまげも結えない、パンチパーマのときに親方も許していたんですよ。三役でもないのに特別扱いされ、身体もできあがっていました。ランニングを積極的に取り入れ、東京では青梅街道を走ったり、横断歩道橋を上ったり下りたりと、とにかくよく走って鍛えていましたね。彼は相撲界に新しい風を吹き込んだ代表格です。

その後、稽古方法も器具を取り入れる部屋が出てきたり、様変わりしましたが、最近は原点を見直そうという空気がよみがえり、四股、鉄砲、すり足を基本中の基本としています。元関脇安芸乃島の高田川親方はそれを徹底し、弟子を指導しています。

白鵬も同じように大相撲の伝統的な稽古を忠実に守ってきました。器具を使って鍛えたという話は聞かないですね。

すり足で汗を流す白鵬

白鵬の身体は一回りも二回りも大きくなっていったのですが、大鵬の変わりようと非常によく似ています。体重がただ増えるだけでなく、バランスよく大きくなっていくのです。

あと、同じ太っていても、足首が細く締まっている力士は見どころがあります。出世するタイプなんです。北の湖、千代の富士、貴乃花もみんなそうですね。足首が太いまま、ストーンとなっている人は出世しない。せいぜい三役止まりですよ。
恵まれた体質に加え、白鵬はどう技を磨き、鍛えてきたのかは次回お話したいと思います。

PR情報

記事一覧

<第18話>名古屋場所、白鵬優勝の可能性90%

今年の名古屋場所は照ノ富士が新大関として土俵に上がることで、大きな期待が寄せられています。大関は通過点としてすぐにでも横綱を狙える逸材だからです。 先…

2015/7/10

<第17話>昭和の大横綱との思い出(下)

大鵬の優勝インタビューを一番数多くやったのは私ですが、いつも寡黙で多くを語りませんでした。真っ先に口にするのは「おかげさまで」。 言えるようでなかなか…

2015/7/6

<第16話>昭和の大横綱との思い出(中)

名実ともに「柏鵬時代」がやってきました。 初対決は昭和35年1月。柏戸は小結2場所目で、大鵬は新入幕の初日から快進撃の11連勝で迎えた12日目。めまぐるしい…

2015/6/27

<第15話>昭和の大横綱との思い出(上)

横綱というのは負けてはいけないのです。 私が60年以上大相撲を見てきた中で「だれが一番強い横綱でしたか」と聞かれますが、「双葉山は別格にして」「1に大鵬…

2015/6/18

<第14話>小さな大横綱との思い出(下)

昭和56年初場所は千代の富士があこがれていた大関貴ノ花が引退した場所でもありました。 私は実況で「真っ赤に燃え続けた太陽が西の空に沈んで、いま、新しい…

2015/6/8

<第13話>小さな大横綱との思い出(上)

“ウルフ”といわれ、史上3位の31度の優勝や通算1045勝を挙げ、国民栄誉賞も受賞した元横綱千代の富士の九重親方が還暦の土俵入りを行いました。 「あの千代の…

2015/6/3

<第12話>相撲人気回復の秘密

皆さん、お久しぶりです。 2年前の連載当時と今は、大相撲を取り巻く環境が大きく変わっています。 相撲人気がなぜここまで回復してきたのでしょうか。 今回の…

2015/5/15

<第11話>角界の未来に向けて

世界に誇る伝承文化であり、神の祀り事とも深い関わりを持ちながら、大相撲は受け継がれてきました。数年前にはその根幹が揺らぐような、さまざまな不祥事もあ…

2013/8/15

<第10話>インタビュー 思い出の力士

大相撲は「抑制の美」を大切にする世界です。勝負に勝っても、「勝った人は負けた人の気持ちになりなさい」といわれるくらい。常に「おかげさまで」という気持…

2013/8/5

<第9話>名古屋場所をふりかえって 満足と落胆と

名古屋場所はお客さんが戻ってきました。昨年5日間だった満員御礼が、今年は7日間出ました。愛知県体育館内の歓声を聞いてほっとしました。 名古屋場所をふ…

2013/7/26

プロフィール

17

日本福祉大客員教授、元NHKアナウンサー・相撲ジャーナリスト

1930年、北九州市生まれ。早大卒業後、53年NHK入局。初任地は名古屋局で、自身初の大相撲実況は54年2月に金山体育館で行われた大相撲名古屋場所(当時は準本場所)。

NHK在職中は名古屋、福岡、大阪、東京と大相撲の本場所開催地の放送局に在籍。81年、大関貴ノ花引退の放送で思わず絶句。“泣きの杉山、泣かせの杉山”と異名をとる。相撲以外でも東京、メキシコ五輪をはじめプロ野球など各種のスポーツ実況を担当。

現在は日本福祉大生涯学習センター名誉センター長、客員教授。名古屋・栄の中日文化センター講座「大相撲の魅力を語る」で講師を務める。深い知識と豊富な経験を基に、講座で興味津々の話題を紹介してくれる。

著書に「大相撲この名勝負」「土俵の鬼三代」「兄弟横綱−若貴の心・技・体」「土俵のチンギス・ハーン 白鵬」「土俵の真実」などがある。

  • 会員登録
  • ログイン
明日の天気(17:00発表)
名古屋
晴れ後曇り
12 ℃/3 ℃
東京
曇り時々晴れ
11 ℃/5 ℃
大阪
晴れ時々曇り
12 ℃/5 ℃
  • 東名, 名神, 東名阪道, 名古屋高速で渋滞情報あり。
  • 登録路線が未設定です。

企画特集(PR)

  • 公式 Twitter はこちら
  • 公式 Facebook はこちら
クラウドファンディング 夢チューブ 中日新聞
東京新聞 電子版
中日新聞の人材研修 ビジネストレーニング「ビズトレ」
中日販売サポート
東海テレビ 庄野アナと 新聞を音読してみよう!
中日防災ナビ
こどもウイークリーのこーなー
過去の企画・特集