<第43話>夏場所は稀勢の里の綱取りに注目 2016/5/7

今場所こそ、稀勢の里に注目します。
優勝すれば横綱昇進は間違いなしです。
春場所千秋楽、優勝決定戦のチャンス目前で白鵬が1差で逃げ切り、無念でした。
横綱審議委員会の内規に「2場所連続優勝、もしくはそれに準ずる成績」の場合、昇進推薦の対象になるとあります。
稀勢の里の場合、優勝が絶対条件ですが、日本中のファンがそれを待っています。

横綱審議委員会の稽古総見で鶴竜と激しい稽古をする稀勢の里(左)

春巡業、場所前、十分の稽古を積みました。相撲内容も進化しました。
春場所の鶴竜戦で不利な体勢をしのいで逆転勝ちした一番です。ひと腰落として踏ん張って我慢し、粘ったことが勝利につながりました。
もう1つ、土俵下での控えの態度も変わりました。ソワソワせず、激しいまばたきも抑えて、静かに集中していました。

この2つが夏場所見られれば、綱取りが夢ではなくなるはずです。
ファンは序盤の取りこぼしでがっかりさせないでほしいと願っています。

白鵬はもちろん優勝候補最右翼ですが、気持ち次第です。稽古不足も心配です。
春巡業で稽古をしなかった日馬富士、巡業に参加しなかった照ノ富士は稽古不十分で臨むようですから後半のスタミナが心配です。豪栄道、琴奨菊も厳しいと思います。

新関脇の勢、琴勇輝が台風の目になれれば盛り上がります。
勢は体が一回り大きくがっちりして力がついたことは確かです。「善戦マン」で終わらないためには立ち合いのスピードはもちろんですが、残す相撲が課題です。

朝稽古で汗を流す琴勇輝

琴勇輝は鋭い出足と気力あふれる突き押しに徹しきれば、また波乱もあります。しかし、上位の壁の厚さを思い知らされる厳しい場所になるでしょう。

平幕に落ちた嘉風、栃煌山、豊ノ島らの巻き返しも期待されます。特に栃煌山は足の故障さえ治れば2桁勝利もあります。
逸ノ城はここで頑張らなければ並の力士になってしまいます。

私は前頭2枚目に躍進した正代が上位にどれだけ通じるか、試される場所として注目します。
正直な正攻法の相撲が評価され、体も申し分ありません。しかし、横綱をはじめ上位力士全員と対戦します。結果を恐れず、一番一番を無欲無心で取ることです。

次に遠藤は運も味方して再入幕しましたが、人気倒れに終わらないためには小さくまとまらず、もっともっと出足を磨くことです。
新十両の宇良がファンを魅了し、話題を呼びます。動きの素早さ、低く飛び込んでの多彩な技から目が離せません。十両が盛り上がることは間違いないでしょう。

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プロフィール

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日本福祉大客員教授、元NHKアナウンサー・相撲ジャーナリスト

1930年、北九州市生まれ。早大卒業後、53年NHK入局。初任地は名古屋局で、自身初の大相撲実況は54年2月に金山体育館で行われた大相撲名古屋場所(当時は準本場所)。

NHK在職中は名古屋、福岡、大阪、東京と大相撲の本場所開催地の放送局に在籍。81年、大関貴ノ花引退の放送で思わず絶句。“泣きの杉山、泣かせの杉山”と異名をとる。相撲以外でも東京、メキシコ五輪をはじめプロ野球など各種のスポーツ実況を担当。

現在は日本福祉大生涯学習センター名誉センター長、客員教授。名古屋・栄の中日文化センター講座「大相撲の魅力を語る」で講師を務める。深い知識と豊富な経験を基に、講座で興味津々の話題を紹介してくれる。

著書に「大相撲この名勝負」「土俵の鬼三代」「兄弟横綱−若貴の心・技・体」「土俵のチンギス・ハーン 白鵬」「土俵の真実」などがある。

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