リニア・鉄道館のジオラマには、浦島太郎と赤ずきんちゃんがいる? 2017/2/11

2013年1月から昨年12月まで、まる4年をかけてほぼ月に1回ずつ「リニア・鉄道館」の展示車両を紹介してきました。展示車両は同館でメインとなるものですから、訪問前の予習や、訪問後の復習などでこれらのコラムをみていただければ、筆者として望外の喜びです。

さて、「リニア・鉄道館」の見どころはそれだけではありません。そこで今回からは、展示車両以外の見どころを紹介していきます。その初回は、誰もが注目する鉄道ジオラマです。

面積約220平方メートル、レール総延長が約1kmにもなる日本最大級の鉄道模型ジオラマですが、同様なものと比べて、「リニア・鉄道館」のものは驚くほどの遊び心を満載しています。
そんな、行ったら是非チェックしたいおもしろ見学の仕方を紹介します。鉄道模型が走っているな…だけでなく、見どころが判るとさらに面白くなることを実感して下さい。

名古屋駅の様子。奥の方に富士山が描かれている。

まずは、リニア・鉄道館の鉄道ジオラマの全景…と記したいところですが、あまりに大きくて、一枚の写真に全景を収めることができません。そこで、横長なジオラマの中心に位置する名古屋駅から右手の写真をご紹介します。

駅ホームがずらりと並んでいますが、新幹線のホームは実物どおり16両編成が停まれる長さとなっています。HOは新幹線の場合、縮尺87分の1ですので、実物で約400メートルもある新幹線編成は、ここで4.6メートルにもなります。5メートル弱の直線というだけで、すでに一般家庭では無理なサイズということが判りますよね。

ちなみに、6畳間の広さは畳の規格によって少し異なりますが、概ね長辺が3.4〜3.8メートルです。つまり、この名古屋駅を自宅に展開したら、6畳間を突っ切って、更に四畳半の半分ほどを占拠することになります。

もちろん、駅だけあっても模型車両は動けませんので、両端はさらに長い距離を要します。
いかに大きな鉄道ジオラマかを実感していただけることと思います。

その名古屋駅の桜通口側には、ツインタワーとなっているJRセントラルタワーズとともに、今春開業予定のJRゲートタワーも「2017年4月、開業。」と記してあります。これは、名古屋駅からあおなみ線でリニア・鉄道館に向かう際に、建設中の同建物の外壁に見られる標記と全く同じです。逆にいえば、4月のJRゲートタワー・グランドオープンとともに、このジオラマの表示もリニューアルされる見込みといえましょう。

その駅ビルの先には富士山が描かれていますので、そのあたりが静岡県ということが判ります。さらに先、鉄道模型のレールが折り返してくるあたりが首都圏。この写真には写っていない、入口から見て左手が関西圏となっていて、JR東海の営業エリアをぎゅっと凝縮したジオラマだということが判ります。

JR高速バスが走り、新幹線には乗客が乗っている!

JR東海が運営するリニア・鉄道館ですので、同社の営業関係はできるだけ網羅しているようです。例えば、上の写真の上部は、見ての通りジェイアール東海バスが運行している高速バスです。車体に大きく描かれたツバメマークが、JRグループだということを彷彿させますよね。

上の写真の下部は、新幹線700系が走っている様子を写したものですが、客室窓の色が一律ではないですよね? これ、実は車内に“乗客”がいるのです。

単に青っぽい窓は乗客不在で座席シートの色が車外から見えているのに対して、乗客がいる座席は、その人の着ているものの色がみえるため、このようにバラバラの色になるわけです。

87分の1の縮尺となるHO(軌間・レールとレールの幅が16.5mm)は前述のとおり、日本の家庭で扱うにはいささか大きなサイズなので、いまや150分の1の縮尺となるNゲージ(軌間・レールとレールの幅が9mm)が主流となっています。しかし、本格派鉄道模型だとここまで表現ができるということを示してくれています。

余談ながら、HOは Half O Guage の略で、Oゲージの半分という意味です。その規格は87分の1縮尺となっています。ところが、これは欧州で登場した規格で、欧州で主流の標準軌1435mmに対して、日本の在来線は1067mmですから、そのまま当てはめると縮尺がおかしくなります。

このため、新幹線は問題なくHOなのですが、在来線については同じ線路幅を使いながら80分の1の縮尺となる16番と呼ばれる規格を使っています。

夜間には保守作業の様子も見られる

リニア・鉄道館の鉄道ジオラマは、日中からはじまり、日が暮れて夜となる…そんな照明効果を見せてくれます。鉄道の24時間を表現しているのです。夜は、日付が変わる頃になると列車が走らなくなりますよね。そこで登場するのが保守作業車です。

上の写真は、在来線の軌道敷きのバラスト(砕石)等を修正する「マルチプルタイタンパー」(通称・マルタイ)という、保守用車が作業をしている様子です。マルタイのあたりは明るく照らされ、そばに係員が集まっています。なかなか見る機会が無いと思いますが、実際の作業現場もこんな感じで、じっくりじっくりと軌道敷きを補修しては進んでいきます。

マルタイの次には道床整理車がついています。さらに車体半分だけ写っているのは道床安定車で、これらが共同で作業をすることで、翌朝の一番列車から安全快適に営業列車の運行をすることができるわけです。

なお、これら作業が終了すると、始発列車の前に確認車が走ります。文字どおり、道床保守作業がちゃんと終わっていることを確認するための車両で、新幹線沿線のホテルに泊まり、未明に起きていると見かけることがあります。

こんな、一般的にはなかなか見ることができない作業などを、目の前で見られるのも、リニア・鉄道館の鉄道ジオラマの見どころでしょう。

左は浦島さん? 右は赤ずきんちゃん?

ここまで記したこだわりの鉄道ジオラマとは方向が違いますが、ジオラマをよくよく観察すると、上の写真の状況に気付きます。

…といっても、一見さんではとても気付かないもので、リピーターとして注意深く観察していると、「なにこれ?」みたいに、一つひとつ気付いていくようなものです。

上の写真の左側は海中にあるのですが、亀に乗っていることから浦島太郎と判りますよね。腰に着けているのは、たまて箱でしょうか。後方を赤い魚が泳いでいますが、その左下には竜宮城があり、乙姫さんが手を振って見送っています。

上の写真の右側は、なんとも時代錯誤のような衣裳を身につけた少女が歩いています。赤い頭巾を被って…と思ったら、その右側の木の下には、おおかみが舌なめずりしているではないですか。これは、明らかに「赤ずきんちゃん」ですよね。

この他にも、ビーチで日光浴をしている女性の一人がトップレスだったり、コンサート会場の後方で倒れている人がいて、回りを人が囲んでいるといったリアルなシーンがあります。また、交通事故処理をしている様子があるかと思えば、映画のロケをしていたり、箱根駅伝の選手が走っているかと思えば、祇園祭の鉾が巡行していたり…と、東名阪の間のハレとケの様子が、さりげなく表現されています。

それぞれ、どこにあるかは敢えて記しません。ぜひ、リニア・鉄道館に出かけて、これらのこだわりシーンを見つけて下さい。そんな見方をすると、楽しいですよ。

なお、鉄道ジオラマは無料で見られるうえ、頻繁に運転してくれるので、何度でも繰り返し見ることができます。

その構想から見どころまでを網羅した「公式 鉄道ジオラマガイド」が、ミュージアムショップで税込み1,080円で販売されています。同書をみると、ジオラマへの理解が深まるとともに、見逃していた視点にも気付かされ、また見に行きたくなります。

また、毎月なんらかの変更がされているとのことですので、一度見たからと安心はできないそうです。そんなこだわりを持つ方は、リピーターになるしかなさそうです…

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを設立。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退した際に、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)、「鉄道名所の事典」(2012.12 東京堂出版刊)、「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)など著書多数。

当「達人に訊け!」をまとめた書「東海鉄人散歩」(2018.7)が、中日新聞社から刊行された。

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