<第22話>平成の大横綱 金字塔への道(3) 2015/8/22

歴代の大横綱は「強さ」と「安定感」と、そして「自分の型」を持っていました。白鵬はすでに「右四つ」という必勝スタイルを確立し、この型に持ち込めば、もはや敵なしといった取り口で角界の頂点に君臨しています。

左で上手を浅く取り、右を差して、かいなを返す「右四つ」だけでなく、じつは「左四つ」でも相撲が取れます。それでも必勝スタイルの「右四つ」にこだわるというところに彼の良さがあるのです。左四つになられて上手を取られると、かなり不利になる。それだけ右の脇が固いんです。本気になって相撲を取ったら、変な負け方はしないですよ。

鶴竜との名古屋場所千秋楽結びの一番。立ち合いからがっぷり右四つに、巻き替えた後は左四つ。力比べの末、白鵬が盤石な寄りで35度目の優勝を決めた

積極的な攻めの姿勢や守勢にまわったときの身のこなし、粘り強さ、力強さ、堂々たる体格、卓越した反射神経など、攻守両方を兼ね備えた大横綱。その「安定感」は非常に高い学習能力に加え、出稽古によって磨かれました。

大成した横綱でありながら、よその部屋に行き、相手を変えて稽古をしている。例えば、春日野、境川部屋とか、出羽、時津風一門の部屋などに出かけています。伊勢ケ浜、立浪は自分のグループだからよく出稽古に行きますが、ときには二所ノ関一門にも出かけますからね。宮城野部屋が小部屋ですから、師匠が大きな個性のある力士と稽古をさせたのです。師弟一体となって積極的に量だけでなく質を求めていたということでしょう。師匠が頑固で出稽古に行かせない部屋もありますから。やはり出稽古には行った方がいいと思います。

白鵬は本場所で対戦しそうな、あるいは初顔で当たりそうな力士を引っ張り出して稽古をつけています。それをガンガンやる。場所前に力の差を見せつけるということが大事です。栃錦、初代若乃花や大鵬、北の湖、千代の富士も同じようにやっていました。

2013年9月の横審稽古総見。当時注目の新入幕・遠藤に稽古をつけ、力の差を見せつけた

横綱というのはそれぐらい厳しく稽古しないといけない。当たり前なんです。「まだ3年早いぞ」と見せつける。それで萎縮しているようじゃ、先は見えています。「なにくそ」と立ち向かって力をつけてもらうことが、いずれ「恩返し」につながるのです。

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プロフィール

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日本福祉大客員教授、元NHKアナウンサー・相撲ジャーナリスト

1930年、北九州市生まれ。早大卒業後、53年NHK入局。初任地は名古屋局で、自身初の大相撲実況は54年2月に金山体育館で行われた大相撲名古屋場所(当時は準本場所)。

NHK在職中は名古屋、福岡、大阪、東京と大相撲の本場所開催地の放送局に在籍。81年、大関貴ノ花引退の放送で思わず絶句。“泣きの杉山、泣かせの杉山”と異名をとる。相撲以外でも東京、メキシコ五輪をはじめプロ野球など各種のスポーツ実況を担当。

現在は日本福祉大生涯学習センター名誉センター長、客員教授。名古屋・栄の中日文化センター講座「大相撲の魅力を語る」で講師を務める。深い知識と豊富な経験を基に、講座で興味津々の話題を紹介してくれる。

著書に「大相撲この名勝負」「土俵の鬼三代」「兄弟横綱−若貴の心・技・体」「土俵のチンギス・ハーン 白鵬」「土俵の真実」などがある。

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