かみのけ座って知ってる? 2017/5/7

風薫る5月の宵、しし座、おおぐま座、うしかい座、おとめ座といった春の星座が出そろっている

5月の宵、南の空には、うみへび座がのたりのたり這い上がって、その全貌を見せている。その長さは100゜にもおよぶ。長さはもちろん、1303平方度という面積も全天88星座のトップなのだ。南中しているうみへび座をよくよく見てみると、頭にかに座を乗せて、おなかにはしし座がふんぞりかえり、しっぽにはおとめ座が寝そべっている。そしてその上にはおおぐま座にうしかい座がおもりのようにのしかかっている。どう見ても積載オーバーなのに、よほど鈍いのか、まるで平気な顔をして春を満喫するかのようだ。

月のないよく晴れた夜、しし座と牛飼座の間に、ぼんやりと星の集団が見える。

さわやかな風に乗って春の星座たちが勢ぞろいする5月。おおぐま、しし、おとめ、うしかいといった、そうそうたる星座たちに囲まれた一角は、一見星がないように見える。しかし月のないよく晴れた夜、よくよく目を凝らしてみると、十数個の微光星の群れがぼんやりと浮かんでくる。この星の集団は、Mel.111という番号が付いた立派な散開星団なのだ。そしてこの星団は、かみのけ座という星座になっている。

この星の集団は、かみのけ座というあまり聴きなれない星座だ。

かみのけ座の起源は、ギリシャ時代に遡ることができるが、なぜか古典星座の代表であるプトレマイオスの48星座には入れてもらえなかった。それどころかそれ以来、存在すら無視されてしまった。しかし捨てる髪?あれば拾う髪?ありの言葉どおり、17世紀になってデンマークの天文学者ティコ・ブラーエによって、カムバックしてもらえたという数奇な運命の星座なのだ。
 

かみのけ座は、エジプトの王妃ベレニケの美しい髪の毛だ

それにしてもかみのけ座とは、なんとも妙な星座だが、ギリシャ神話では、プトレマイオス王朝の王プトレマイオス三世の王妃ベレニケの深い愛情のこもった、神もうらやむほどの美しい髪の毛なのである。

ベレニケは、シリアとの戦争に勝って夫が無事に帰ってくることを願い、美の女神アフロディテと「もし夫を無事に帰して下さったら、この髪の毛をあなたにささげます」という約束をしたのだった。その願いが神に聞き入れられたのか、やがて夫が勝利をおさめたといううれしい知らせが届いた。大喜びのベレニケは、何の惜しげもなく自分の髪を切って、アフロディテの神殿にささげた。そのようすを見ていたアフロディテは、ベレニケの愛の深さを称え、その髪の毛を天に上げて星にしたのだった。

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天文研究家

1953年三重県四日市市に生まれる。学生時代は名古屋市科学館山田卓先生の下で天文普及活動に参加。天体望遠鏡メーカーに勤務の後、1992年にフリーとなり星を見上げる楽しさを広めるべく、あさだ考房を設立。

天文・科学雑誌に記事を連載、単行本・プラネタリウム番組シナリオ執筆のかたわら、天文宇宙関連の講演・講座、プラネタリウム解説を行っている。

最近は、生涯教育を意識した、プラネタリウム運営支援、プラネタリウム解説指導にもかかわっている。日本天文学会会員、NPO法人アイ・プラネッツ理事長。

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