秋の星座のキーワードは「幸せ」? 2018/10/30

秋の星座は、みなみのうお座、うお座、みずがめ座など、水にちなんだものが多い。

●秋の夜空には水に関係する星座がいっぱい
 10月になると星空も、夏のギラギラした星座たちが、ようやく西に傾き、代わってしっとりと落ち着きのある秋の星座たちが、続々登場している。秋の星座には明るい星がなくて寂しいというが、秋の星座までも夏や冬の星座のように華やかだったら、人は星を見なくなるかも知れない。夏の猛暑を生き抜いてきて、疲れたからだと心を癒してくれるのが秋の星空。さわやかな風に乗って聞こえてくる心地良い秋の虫の音をBGMに、ワイングラスを傾けながらじっくり味わいたい。秋の星空がしっとりとしているのは、自然から贈られたやさしい心づかい。

しっとりとした秋の星座たちを、ひつつひとつたどってゆくと、みずがめ座、みなみのうお座、うお座、くじら座、いるか座と言う具合に、意外にも水や海に関係のある星座が多いことに気がつく。さらに、やぎ座といっても半山羊半魚だし、ペガスス座の父親は、海の神ポセイドンなのだ。

 なぜ秋の夜空に水に関係する星座が集結したのか?偶然と言ってしまえばそれまでだが、実はちゃんとした訳がある。星座のふるさとメソポタミア地方では、太陽がこれらの星座とともに東の空に昇るころ雨季を迎えることから、水にちなんだ星座が創られたということらしい。

水の星座の中の「幸せ」の星たち

●秋の星は「幸せ」がキーワード
 ところで、みずがめ座あたりの星の名前を探ってみると、「幸せ」をキーワードとするアラビア語で付けられた名前の星たちが、笑顔で迎えてくれる。たとえば、みずがめ座α星サダルメリクの意味は「王様の幸せ」、β星サダルスウドは、「幸せの中の幸せ」、ε星アルバリは、「飲む者の幸せ」、γ星サダルアクビアは、「秘めた幸せ」。さらに幸せシリーズはやぎ座、ペガスス座へと波及する。やぎ座のしっぽで光るγ星ナシラは、「幸せを運ぶ人」、そしてペガスス座の顔で光るバハムは、「家畜の幸せ」、その東のξ星ホマムは、「英雄の幸せ」、前足で光るλ星サダル・バリは、「すぐれた者の幸せ」、最後は、η星マタルの「雨の幸せ」。

 砂漠同然のメソポタミアの地で暮らす民にとって、水は命の次に大切なもの。雨季が訪れ、天から雨を授かることは最高の喜び、庶民はもちろん王さまも英雄も学者も家畜までもが、平等に浴びるほど水を飲み、雨で体を清め、心を潤したのだろう。きっと名のものにも代えがたい最高の幸せを誰もが感じたに違いない。

 今に生きる私たちは、こんな素朴な「幸せ」を感じることができるだろうか。「幸せ」を追い求めてひたすら走り続けた結果、確かに便利で物質的には豊かで満たされた「幸せのようなもの」は手に入れたかもしれない。しかし宮沢賢治が「銀河鉄道の夜」で、サン・テグジュベリが「星の王子さま」で問うたような人が人として生きるための「本当の幸せ」をどこかに置き忘れてしまったような気がする。

 秋の夜長、みずがめ座の幸せの星を探しながら、現代に生きる私たちにとって、「本当の幸せ」とは何かをもう一度考え直してみることにしよう。

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天文研究家

1953年三重県四日市市に生まれる。学生時代は名古屋市科学館山田卓先生の下で天文普及活動に参加。天体望遠鏡メーカーに勤務の後、1992年にフリーとなり星を見上げる楽しさを広めるべく、あさだ考房を設立。

天文・科学雑誌に記事を連載、単行本・プラネタリウム番組シナリオ執筆のかたわら、天文宇宙関連の講演・講座、プラネタリウム解説を行っている。

最近は、生涯教育を意識した、プラネタリウム運営支援、プラネタリウム解説指導にもかかわっている。日本天文学会会員、NPO法人アイ・プラネッツ理事長。

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