「コーヒー発見伝説」 2013/9/14

イエメン バニー・イスマイル村

コーヒーの樹が世界に広がったお話をいたしましたが、私たちが知っているコーヒーは同じ苗木から生まれたもので、その国や土地や気候によって味わいが違っていただけなのです。

現在は、長い歴史の中で、その土地に合った品種改良がおこなわれ、まったく違った味わいになりましたが、量は安定して収穫できるようになりました。今回は、コーヒーの起源を少し説明いたしましょう。

コーヒーに関する記述は15世紀以前にはありませんので、始まりに関しては、ほとんどの話が想像の世界で確定的なものは記述として残っていません。

しかし、逸話としては、エチオピアとイエメンに、それぞれにコーヒーの始まりを示す有名な「発見伝説」があります。

『コーヒー発見伝説・・2つの代表的逸話』 
【参考文献】 〜「ALL ABOUT COFFEE」ウイリアム・H・ユーカース薯 
 
<一話>カルディのコーヒー発見伝説・・エチオピア
1671年レバノンの言語学者ファウスト・ナイロニの著書“眠らずの修道僧”より。

伝説によると、“眠らずの修道僧”の話はまたたくまに広がり、間もなくして「魔法の木の実は王国全土で所望されるようになった。時の経過とともに、東洋の他の国々や地域でも飲むようになった。」

フランスにはこの伝説を生き生きと伝える話があるが、それは次のとおりである。

〜ある日のこと、カルディという名の若い山羊飼いがふと気がつくと、いつもは従順な山羊たちが夢中になって、これまでにもなく元気よく跳ね回っている。普段は誇り高くまじめなたちのこの立派な若者も、いたずら小僧のように跳ね回った。この馬鹿騒ぎは果実のせいだとカルディは思った。山羊たちがおいしそうに食べていたからである。

この話には続きがある。哀れにも若者は重い心臓の病にかかった。少しは元気になるのではないかと願い、例の果実を摘み取ってきて食べてみようと思った。試してみると、その結果は驚くほどだった。厄介な事はすべて消え去り、若者はアラビアでいちばん幸せな山羊飼いになった。

山羊たちが踊りだすと、若者は陽気に仲間に加わり、一緒に楽しみ爽快な気分になった。ある日、ひとりの僧(イスラーム)が通りかかり立ち止まった。ふと見てびっくり仰天した。舞踏会が行われているではないか。

輪になって踊る淑女たちのように、たくさんの山羊が元気よくつま先旋回をしている。若者のほうは相手に近づいたり、離れたりしながら、まじめくさって踊っている。風変わりな牧歌風の踊りの群れの中を山羊飼いは通り抜けて出てきた。

その踊りは何の騒ぎかと、驚き顔の僧は尋ねた。カルディは貴重な発見のことを話した。さて、この僧には深刻な悩みがあった。いつも祈祷の最中に眠気を催すのである。だから、その不思議な果実は眠気を催すことを克服するために神が遣わしてくれたのだと考えた。

信仰のあついことは、食べ物をおいしく食べようとする本能とは無関係ではない。この僧のその本能は凡人以上だった。だから山羊使いの言う果実を火であぶり煮たててみようと思いついた。

このようにして考え出された飲み物がコーヒーなのである。王国ではまたたく間にすべての僧がこの飲み物を飲むようになった。祈祷の励みになったからであるが、おそらくまずくはなかったことがもう一つの理由である〜

<二話>シェーク・オマールのコーヒー発見伝説 ・・イエメン
世界初のコーヒー本「1587年アブドル・カディーのコーヒー由来書」の文献が下敷きになっている。

〜ヒジュラ紀元656年(西暦1278年)、スシャデリという名のムッラー(イスラム教国の法律学者)がメッカへの巡礼に出た。翠玉山に辿り着くと、弟子のオマールに振り向いてこう言った。

「我、この地にて死なん。我が魂去りし後、顔覆いたる者、汝の前に姿を現さん。それ汝に命令を出す、必ず実行すべし」。

スシャデリが死んだ日の真夜中、白い布で顔を覆った巨大な亡霊がオマールの前に現れた。「汝、何者ぞ」と、オマールは訊ねた。

亡霊は顔の覆いを引きずりおろした。オマールが驚いたことに、それはスシャデリ本人ではないか。生前よりも十腕尺(約3m)も背が高くなっている。ムッラーが地面に穴を掘ると、奇跡のように水が湧き出てきた。師の霊はオマールにこう命じた。

その水を碗に満たして旅を続けよ。ある地に着くと碗の水は揺れが止まる。それまでは決して歩みを止めてはならないと。「かの地にて」と、亡霊は語った。「偉大なる運命、汝を待たん。」オマールは旅を始めた。イエメンのモカに入ると、水の揺れが止まっている。この地で旅を止めなければならない。

美しいモカの町は、当時は疫病のせいで荒廃していた。オマールは病人たちのために祈祷を捧げた。この聖職者はマホメットのような能力があったので、オマールの祈祷によって大勢の人々は病気が癒された。

それでも疫病は広がり続け、モカ王の娘が病にかかった。父親の王は娘を癒してもらうため、その托鉢僧の住まいに連れてきた。だが、その年若い姫は類稀な美人であったので、病が治るとオマールは姫をかどわかそうとした。

王はこの新たな報いには我慢ならなかった。オマールは町から追放され、オウサブの山中へ流刑に処せられた。食糧は草木で住まいは洞窟であった。

「ああ、わが師、スシャデリ様」。ある日、その托鉢僧は叫んだ。「モカにて我が身に起こりしこと運命ならば、なに故、わざわざ我に碗を持たせ、この地に遣わせたもうた」。

その途端、この訴えの声に応えるように、たとえようのない美しい歌声が聞こえてきた。すると素晴らしい羽根を持った美しい鳥が飛んできて木に止まった。この小鳥の歌声があまりに美しかったので、オマールはさっと手をのばした。ところが木の枝々には花と果実があるだけだった。

オマールがその果実を摘み取ってみるとたいそう美味しかった。身体中の大きなポケットにそれを詰みこみ洞窟に戻った。ニ、三本の草木を夕食に煮る用意をしているとある考えが浮かんだ。惨めな汁の代わりに、今しがた摘み取ってきた果実を使ってみようと思ったのである。その果実からは美味しくて香りのよい飲み物ができた。それがコーヒーである。〜

・・・実話ではありませんが、世界的には有名な逸話として語り継がれています。私はエチオピアとイエメンで、現地の方々にこの『逸話』を知っているか?と何度も尋ねました。

「カルディー」の話はエチオピアでは多くの人々が知っていましたが、「オマーン」の話はイエメンの人々は全く知りませんでした。

何が真実か真実でないかではなく、コーヒーの発見をいろいろな想像の世界で楽しんでみて下さい。

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日本コーヒー文化学会 理事、日本スペシャルティーコーヒー協会会員(SCAJ)、SCAJ公認 コーヒーマイスター(NO.169)、前・金沢大学講師 (文部科学省公認)

1977年岐阜県瑞浪市に「待夢珈琲店」開店、コーヒーの歴史書や専門書を読みあさり、独学で焙煎を覚え、自家焙煎の珈琲専門店をスタートさせる。

その後、世界のコーヒー産地を自らの足で回り、納得のいく優良な豆を買い付け、良質で新鮮な体に良いコーヒーを提供しています。

また、現在、中日文化センターの珈琲教室をはじめ、基礎クラスから専門クラスまで12講座をこなしています。

産地歴訪はエチオピア3回、イエメン4回、ブラジル、インドネシア、ケニア、タンザニア、ペルーなど。

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