くすりとその大きさのお話し 2014/2/18

前回のくすりの形シリーズ(1)から(4)では、薬にはいろいろな形があることを紹介しました。今回はそれらの大きさに着目してお話ししたいと思います。

最も一般的な薬の形である錠剤の大きさは、直径7から9mmくらいが普通です。重さは200から300mg程度です。

高齢化社会が問題になり始めたころには、どのくらいの大きさがいいかいろいろ議論もされ、アンケート調査なども盛んに行われました。小さい方が飲み込むにはいいのですが、小さすぎるとつまめない、落としたときに拾えない等の問題が指摘され、8mmくらいが最適と言われています。

以前、くすりの形シリーズで少しお話しした口の中に入れると形が崩れる(崩壊する)口腔内崩壊錠が今日ほど一般的にはなってない頃の話です。

高コレステロール血症治療剤のコレスチミド錠がミニタブレット(粒)に

最近、とっても小さな錠剤が少し注目を集めています。作り方は錠剤と一緒でも粒、粒状錠などと命名されています。

海外ではミニタブレットと呼ばれています。これは一度に飲まなきゃならないお薬の量が多い場合には有効です。例えば、高コレステロール血症治療剤のコレスチミド錠は、写真のように1回3錠の大きめの錠剤を飲む設計でしたが、飲みやすさを考えミニタブレット(粒)も開発されています。

また、最近発売されたジェネリック医薬品にも粒状の錠剤があり、注目されています。バラシクロビルという医薬品は、帯状疱疹などの治療に用いられる抗ウィルス化学療法剤と分類される薬ですが、1回にこの成分を500mg服用します。

従って、錠剤は大きくなります。発売された粒状の錠剤は、小さいだけでなくさらに工夫をしてあり、表面が水にぬれるとぬるぬるとして喉を通りやすくなると謳われています。一般の錠剤でもこの様な工夫はされてきていますが、大きさの制御が加わって新しい飲みやすさへと繋がっています。

吸入された粒子の大きさと気道内での分布

喘息治療等の吸入剤となると、くすりの粒の大きさはその効き目にも大きく関わってきます。液体として噴霧して吸入するもの、粉末を直接吸入するものがありますが、いずれの場合も、その大きさは数マイクロメーター(μm)になるように設計されています。

1μmは1mmの千分の一です。これは、図のように吸いこまれた後の液滴、粒子の挙動が粒子径により左右され、この辺りの大きさがちょうど気管支の奥の方に到達してそこに留まることが判っているからです。喘息治療の吸入剤は気管支、細気管支に届かなければ、効果を発揮できないので、粒子径の設計はとても大切です。

最近ニュースに時々出てくるPM2.5・・・ご存知ですね。大気中に浮遊する粒状物質ですが、2.5の数字は2.5マイクロメーター(μm)を意味しています。この大きさだと、吸い込まれた後、気管支、肺に届いて留まりやすく、蓄積すれば健康被害にも繋がるから大変です。

竹内 洋文(たけうち ひろふみ) 岐阜薬科大学・教授、薬学博士、薬剤師

京都大学薬学部卒業、同大学院修了(薬学博士)後、岐阜薬科大学に勤務。以降、製剤学の研究に従事。現在、教授、学生部長。公益社団法人日本薬剤学会理事、粉体工学会副会長等の学会活動の他、日本薬局方の専門委員としても活躍。著書、学会での講演も多数。「人に優しい製剤設計」を目標に、様々な製剤に関する研究を展開中。

PR情報

記事一覧

「静かな時限爆弾」アスベストはおそろしい

人体に与える影響 アスベストは天然の繊維状の鉱物で、「石綿」(いしわた、せきめん)」と呼ばれ、「燃えない」、「引張に強い」、「摩耗しにくい」、「電気を…

2016/11/15

食品と薬学(3) 〜未病で留めるには〜

『5 Colors A Day !』というスローガンがあるように、健康維持のために毎日5色の野菜や果物を食事で摂ることが推奨されています。例えば、トマトの赤色はリコペ…

2016/11/2

食品と薬学(2) 〜食品と薬にも相性がある?〜

私たちは毎日の食事で肉や野菜など様々な食品を口にしています。食品には、昔から「鰻に梅干し」や「スイカに天ぷら」など、相性の悪い食べ合わせが知られてい…

2016/10/26

食品と薬学(1) 〜カレーに含まれる健康成分を探す〜

今月の連載は、簡単な実験を通じて、食品と薬学との関わりを紹介したいと思います。 さて、去る9月3日、「土曜日の才能開花教育 〜ギフティッド〜」という、岐…

2016/10/14

「活性酸素」は本当は いいやつ だった その6 (最終回)

「がん」の3大治療法は「外科手術」、「放射線療法」、「抗がん剤療法」です。その内、ある種の抗がん剤療法は、がん細胞の中に取り込まれた抗がん剤がそこで…

2016/9/30

「活性酸素」は本当は いいやつ だった その5

前回、活性酸素が健康の維持に役立っていることを紹介しましたが、私たちはそれ以外に、活性酸素をちょっと強めにすることで病気の治療に役立てています。 例…

2016/9/20

「活性酸素」は本当は いいやつ だった その4

人間は約60兆個の細胞からできていると言われています(誰が数えた?)。細胞同士はお互いにコミュニケーションをとりながら、生命体として成り立っていますが…

2016/9/10

びっくりする薬の話B 同じ薬が2つの病気に効く 使う量は1,000倍以上の差

メトトレキサートという薬があります。メトトレキサートは、全く異なる2つの病気、関節リウマチとガンの治療に用いられます。メトトレキサートをリウマチ治療…

2016/8/30

びっくりする薬の話A 薬害を引き起こした薬が今は特効薬

多発性骨髄腫という血液のガンがあります。今から半世紀ほど前では、多発性骨髄腫を発症すると5年後の生存率は10%程度でした。その後、治療方法が進歩し、現在…

2016/8/20

びっくりする薬の話@ とても高価な薬

お薬には、ベンザやパブロンなど薬局で市販している薬(大衆薬)と、医師による診察後に処方せんに基づいて使用する薬(処方薬)があります。大衆薬は、販売す…

2016/8/10

プロフィール

19

達人に質問をする

本学は、美しい金華山と長良川などの自然に恵まれ、また歴史と文化の薫漂う岐阜市の北部に位置し、80有余年に及ぶ歴史の中で、建学の精神である「強く、正しく、明朗に」をモットーに、「人と環境に優しいグリーン・ファーマシー」を基本理念とした薬学教育を通じ、安心で安全な医療に貢献できる薬剤師や、人と環境にやさしい方法で薬を創ることのできる研究者や技術者を養成しています。

地域に生き、世界に伸びる大学として、今までの実績を基にさらに発展し続ける努力を重ねております。

関連リンク

  • 会員登録
  • ログイン
今日の天気(05:00発表)
名古屋
晴れ時々曇り
32 ℃/--
東京
曇り時々晴れ
32 ℃/--
大阪
曇り
31 ℃/--
  • 東名, 名神で渋滞情報あり。
  • 登録路線が未設定です。
  • 公式 Twitter はこちら
  • 公式 Facebook はこちら
クラウドファンディング 夢チューブ 中日新聞
東京新聞 電子版
中日新聞の人材研修 ビジネストレーニング「ビズトレ」
中日販売サポート
東海テレビ 庄野アナと 新聞を音読してみよう!
中日防災ナビ
こどもウイークリーのこーなー
過去の企画・特集