気功治療への道案内/一日目 2019/6/3

◆プロローグ

早めの夏がやってきた2019年の5月の末に、二人の娘が私の愚庵にやってきた。
二人は、気功治療の技を身につけたいということだった。

彼女たちの友人の中には、偏頭痛やめまい、肩こり、腰痛、不眠、冷え症、生理不順などの症状を持っている人や、皮膚のトラブルを抱えている人、仕事上のストレスから精神的に参ってしまっている人など色んな人がいて、気功を習っている彼女たちに「気功で治してくれない?」と頼んでくるということで、彼女たちは彼女たちなりに、気を当てたりして、時々は症状を緩和させることは出来ても、そんなことだけでは治療にならないと実感し、私に教えを乞いに来たという訳なのである。

私、静観は、36年間、鍼灸治療に携わってきていて、東洋医学の基礎や応用については一定の理論や技術を持ち合わせており、鍼の代わりに「気」を用いるという視点で彼女たちに「気功治療」のいろはを伝えることは出来るかも知れないと思った。
そして、私は彼女たちが、家族や友人たちに一定の癒しや手当ての技を含め、気での治療が出来るようになるためのお手伝いをしようと決めたのだった。

◆東洋医学の一翼という視点

二人の娘を座敷に上げ、愛飲している黒豆茶をふるまった後、私は口を開いた。
「お二人ともご存知のように、日本では気功治療には免許も資格もありません。
だからと言って、自分勝手に、独りよがりに、好きにすれば良いということにはならないと思うんですよね。
気による治療は少なくとも東洋医学の一つの治療法として、鍼灸治療、按摩治療と同様に、患者さんの気の調整をしていくことが柱なんだという視点を忘れてはならないでしょうね。」

茉奈(まな)が確認するような口調で訊ねた。
「つまり、鍼の代わりに私たちの掌や指先から発する気を用いるということなんですね?」
「そういうことになりますね。」
と、私は答えた。

そうそう、二人の娘の名前、お知らせしていませんでしたよね。
一人は茉奈さんと言い、気功歴は5年くらいでしょうか。
二人目は佳与(かよ)さんで、彼女は3年目くらいだったと思います。

「だから、気功治療を施すに当たっては、東洋医学としての診察、診断、治療の基礎的な知識と技術、中でも治療の方針や治療の成否、予後を判断するための脈診は身につけておく必要があると思うんです。」
私が言うと、
「脉診ですかー?」
と、少し身をのけ反らせて佳与が高い声で言った。
「それって難しいんですよね。私たちにもわかるようになりますか?」
と、茉奈が訊いた。
「大丈夫ですよ。私も最初は素人だったんですから(笑)」
と言って、私は湯飲みに手を伸ばした。

気功治療と言えども東洋医学の一翼を担っているんだという立場に立ちながら、実践的に気功治療を身につけていけるような方法を模索していくので、どんどん質問して欲しいということを二人に伝え、私たちは「気功治療」が出来る術者になるべく学びを積み重ねていくことを確認し合ったのである。

◆気を発することと脉を診ることの練習を!

「私、友達が頭が痛いと言うので、気のボールを作り、それで彼女の頭を包むようにしていたら、頭の痛いのが治まってきたことあるんですが、気功治療って、そんな単純なものじゃないんですよね?」
と、茉奈が訊ねた。

私は言った。
「そうですねぇ、私たちの気功治療が相手の体に影響を与えることが出来たかどうか、良い効果をもたらせたのかどうかを私たちは自分で判断出来るようになる必要があるんですよね。」
「ただラクになったから治療として成功したということにはならないということですか?」
佳与が訊ねた。

私は答えた。
「はい。例えば、屋根の瓦が落ちたとしますね。
その場合、突風で吹き飛ばされただけなら、屋根を葺き替えれば良い訳ですが、家が傾いてきて、それで瓦が落ちたとすれば、屋根を葺き直しただけではダメですよね?」
「症状は緩和出来ても、それを起こしている根っこが崩れていては、また症状が起こってくるということですね?」
と、茉奈が言った。

「その為には、掌や指先から気を発することが出来るようになることだけではなく、脈を診て、治療の成否や効果を判断することが出来るようになることも大切なんですよ。
ですから、私たちが発する気がイメージではなく、確かな感覚として体感できるようになるまで練習することに併せて、脈診の技術を基礎から一つずつ身につけていく必要もあるんですね。」
「そうすれば、私も気功治療が身についていくんですね!」
と、佳与が嬉しそうにやや大きな声で言った。

私は頷き、焦らず、諦めることなく、一緒に気功治療の道を歩んでいきましょうと、二人を激励したのであった。

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鍼灸師・気功法講師。

和歌山県出身。日本福祉大卒。名古屋市内に鍼灸院「和気」を開院(2015年、閉院)。林茂美師に師事し気功を習得。愛知県名古屋盲学校専攻科非常勤講師(2016年退職)

現在は名鉄カルチャースクールにて講師活動のほか、名古屋市内にて各種の気功講座、気功教室を担当。

また、2013年より京都、妙心寺内大心院にて気功講習会を開始。現在に至る。

趣味は、陶芸、京都・奈良ウォークなど。

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