副作用のない“夢の薬”を目指して 〜薬物送達システム(DDS)って何?〜(1) 2018/9/11

 お薬を飲んだり、注射したりして治療を行うことを、薬物療法とか化学療法と呼びます。お薬により症状を和らげ改善しますが、場合によっては、望ましくない作用である副作用が現れることもあります。

 例えば、錠剤を服用すると消化管(主に小腸)より薬物が吸収され、血中に薬物が移行します。その後、薬物は薬効を発現し、代謝され、体外へ排泄されます。図1は、血中の薬物濃度変化を模式的に表わしたものです。

 図1 A)に示すように、服用後しばらくしてから吸収が起こり、薬物の血中濃度が上昇し、最高血中濃度に達した後、代謝により薬物が分解され血中濃度が徐々に減少していきます。図1 A)の中の治療域(薄い青の部分)の範囲に血中薬物濃度がある間は薬効を示すのですが、濃度が低下して無効域になると、効果を示さなくなります。お薬を処方されると、1日3回食後服用などの記載があります。これは、血中薬物濃度を治療域の範囲内に留め効果を持続させるためです。一方、1回1錠のところを2錠飲んだりすると、最高血中濃度は高くなり、副作用発現域に達してしまい、重篤な副作用を引き起こしてしまう可能性があります。したがって、用法・用量を守って正しくお薬を使用することは、とても大事な事です。図1 B)のように治療域の狭い薬物では、服用回数を1日3回などにすると@のように、副作用発現域に入るので副作用の心配が出てしまうので、Aのように服用回数を多くしなければならず大変面倒です。このように治療域の狭いお薬では、特に薬物濃度の制御が難しく、抗ガン剤などはその1つであり、薬物ががん細胞に集まるようにし、正常細胞には行かないようにすることが望まれます。

 副作用をできるだけ少なくし、効率的な薬物療法を目指す考え方として、薬物送達システム(ドラッグ・デリバリー・システム、DDS)があります。DDSの基本的な考え方は、「薬物を必要な場所に、必要な量を、必要な時間だけ届ける」というものです。つまり、「必要な場所(疾患部位あるいは標的部位)に、必要な時に、必要なだけの量」の薬物を届けることができれば、効果が高く、副作用が殆ど無い、理想的で効率的な薬物治療が達成できることになります。(図2)

 DDS技術により、期待される効果・効用をまとめると、
1) 薬の効果がより明確になることから、投与量の軽減や適応の拡大が期待されます。
2) 特定の薬の作用だけを取り出したり、抑制したりすることが可能になります。
3) これまで副作用が強いため使用できなかった薬をDDS技術により、副作用を抑制して安全に使用することが可能になります。
4) 新しいバイオ医薬品(たんぱく、ペプチド、核酸などの医薬品)の安定性や膜透過性などの問題解決に役立ちます。
5) 以上より、患者さんの負担の軽減や生活の質(QOL)の向上に役立ちます。

 次回は、DDSの要素技術と経口投与におけるDDS医薬品について紹介します。

近藤伸一 (岐阜薬科大学 薬物送達学大講座 薬品物理化学研究室 教授)

平成3年 岐阜薬科大学大学院博士後期課程修了。同年 岐阜薬科大学 薬品物理化学教室助手。その後、講師、助教授を経て、平成19年より現職の岐阜薬科大学 薬物送達学大講座 薬品物理化学研究室教授。主な研究テーマとして、pHなどの外部刺激により物性が変化する機能性高分子の合成とその特性を活かした医薬品開発への応用研究、並びにプラズマ表面処理を利用した高分子材料表面の機能化とその表面への細胞膜の成分であるリン脂質自己組織化膜の構築などの新しい医療用材料等の開発を行っている。

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