特集・連載 考える広場

どうなる、どうする労働組合 

2019/5/4 紙面から

相原康伸さん

 「令和」が幕を開けた五月一日は、労働者の祭典「メーデー」でもあった。働き方改革が進む一方、労働組合の組織率は七年連続で過去最低を更新中。労働組合のあしたはどっちだ。

 <組織率> 雇用者に占める労働組合員の割合で、厚生労働省の調査では、昨年6月末で17・0%と前年より0・1ポイント下がった。単一労組数も137減り、2万4328に。組織率は1949年には55・8%を記録していた。一方で、パート労働者の加入が進み、組合員数は8年ぶりに1000万人台を回復した。

◆運動の再構築進める 連合事務局長・相原康伸さん

 連合は一九八九年に結成し、今秋、三十周年を迎えます。ベルリンの壁が崩壊し、国際社会の秩序が大きく転換する中での船出となりました。

 あれから三十年。私たちは大きな変化の中にいます。デジタル化が加速し、就労形態が多様化する中、格差は拡大しています。家庭や地域もその姿を変えてきました。労組の運動も時代の変化に取り残されないよう、この機に思い切った転換が必要です。運動の再構築と重点化を進めたいと思います。

 四月に働き方改革関連法が施行されました。健康と安全を基盤に長時間労働から脱却しなければなりません。一方、人工知能(AI)の進化で将来は仕事の半分がAIに置き換わるとの予測もあります。しかし、仕事の未来を考えるチャンスです。働くことの意味や価値を真剣に考えていきたいと思います。

 企業内、産業内の労組が経営側との労使交渉によって働く環境を改善していく伝統的な組合活動は、今でも核で大事です。一方、組合員さえ良ければそれでよし、という話ではありません。労組のない職場で働く皆さん、非正規雇用で働く皆さん、今後は、外国人の皆さんにも目線を合わせた運動も求められます。働く仲間のナショナルセンターとして健全な働く環境を着実に広げたいと思います。

 連合結成時に八百万人だった組織人員は減少を続けましたが、現在、七百万人台に回復しました。十七年ぶりです。世の中の共感を得、社会的役割を発揮するには多様なメンバーが不可欠です。連合では女性役員も徐々に増えてきました。また、17%強に当たる百二十万人は非正規雇用で働く仲間です。労組の少ない中小企業の仲間を増やす努力も続けたいと思います。

 連合は東日本大震災の発生直後から、延べ三万五千人を被災地に派遣しました。人数は自衛隊に次ぐ規模でした。また、日々、働き暮らす、地域の活性化も大事です。NPOと連携して地域づくりや社会課題の解決に取り組むなど、労働運動のフィールドを広げていく必要があります。

 労組は働く人が困ったときの最後のよりどころです。大きく時代が変化していく中だからこそ、将来への不安を払拭(ふっしょく)し、次代を創る若者の希望につながる労組の役割を果たしていきたいと思います。

 (聞き手・越智俊至)

 <あいはら・やすのぶ> 1960年、東京都生まれ。法政大卒。83年、トヨタ自動車入社。90年から労働組合の活動に携わる。トヨタ自動車労組副委員長、自動車総連会長などを経て2017年10月から現職。

◆横の連帯、今後も必要 神戸大教授・大内伸哉さん

 大企業の正社員らを対象にした今の労働組合は限界に来ています。その背景にあるのは、あらゆるモノやコトがデータとしてコンピューターで処理可能になる「デジタライゼーション」による第四次産業革命です。

 人工知能(AI)やロボットなどのデジタル技術を使えば人間の仕事の多くは代替可能。既存の産業は、次々とモデルチェンジを始めています。企業の業務編成では機械化が進行し、それに伴い、人々の働き方も大きく変わろうとしています。

 長期雇用、年功序列、福利厚生を特徴とした日本型雇用システム。日本独特の企業別労組もこの一端を担ってきました。会社の繁栄が続く時代には、十分に意味がありました。しかし、このシステムは、高度経済成長期という奇跡の中で花開いたものにすぎません。奇跡の余韻が消えつつある今日、大きく変わらざるを得ないのです。

 そうなると、これまで会社を支えてきた企業別労組も変わらざるを得ません。組織は時間がたつとどうしても硬直化し、意識が内向きとなり、外で起きている新たな変化への感度が鈍くなります。それでも、これまで組織を維持できたのは、ユニオンショップ協定を結んで労働者の組合加入を強制したり、チェック・オフ協定を結んで組合費を賃金から天引きして直接受け取ったりすることができたからです。ただ、これでは労働組合は努力しなくても組織を維持できるので、堕落してしまいます。会社を巡る環境が劇的に変わる中、企業別労組の未来は、組合自らが、労働者が組合費を払ってでも加入したいと思えるようなアピールをどれだけできるかにかかっています。

 労働組合の組織率は減少傾向にありますが、地域ユニオンの活動はむしろ活性化しています。これは、労働組合のニーズが減っていない証しです。また、コンビニの店長のように、経営者ではあるが、一般の労働者以上に経済的に厳しい状況にある人を、どう組織するかという新たな問題も生じています。さらに今後は、ICT(情報通信技術)を活用してフリーで働く人も増えていきます。こうした人たちにとっても、横の連帯や共助は不可欠です。つまり労働組合「的」な存在は今後も必要だということです。そこに労働組合の可能性があります。労組も変わらねば、と思います。

 (聞き手・都築修)

 <おおうち・しんや> 1963年生まれ、兵庫県出身。博士(法学)。技術革新がもたらす雇用への影響や政策課題、労働法が専門。著書に『会社員が消える』、『AI時代の働き方と法』など多数。

◆孤立する働き手を救え はたらく女性の全国センター共同代表・伊藤みどりさん

 一九七〇年代の中ごろから労働組合の変質は始まりました。女性の切実な要求を受け止めず、男性の組合幹部が会社側と中途半端な妥協をしたり、組合員から新自由主義的価値観を追認する意見が出たり。どんどん御用組合になっていきました。

 八〇年代に入ると、日本企業はアジア各地に次々と工場を建てました。それは、私が最初に就職した会社にもあったベルトコンベヤーなどによる単純作業の工場。チャプリンの「モダン・タイムス」の世界です。日本では多くの労働者が職業病に悩みました。海外の労働者が同じ目に遭おうとしているのに、組合は全く抵抗しなかった。労働問題活動家の塩沢美代子さんは当時、こう宣告しました。「日本の労働運動は死んだ」と。

 男性の正規労働者の働き方をモデルとする既成組合の限界でした。私は仲間と一緒に九五年、働く女性が個人で加入できる「女性ユニオン東京」をつくりました。その後、有期契約の人が増えた結果、相談はあるけれど組合加入は増えないようになっていきます。孤立した女性たちの相談に応じようと二〇〇七年、市民団体「はたらく女性の全国センター」を発足させました。組合という組織形態がもう限界だと思ったのです。

 非正規で孤立する労働者は増えています。中には不満をためている人もいるでしょう。昔はそれが爆発すると職場での打ち壊しが起きました。いわゆるバイトテロは現代版の打ち壊しかもしれません。

 私たちのセンターでは今、精神障害者からの相談が増えています。対応が進んだ身体障害者と違い、雇うだけ雇って、後は配慮もせず切り捨てというケースが目立っています。

 女性、パートタイマー、非正規、障害者−。男性正社員モデルは「想定外」の働き方を次々と生みました。産業革命以後のモデルが行き詰まっているのだと思います。社会主義のモデルも同じです。ならば、一人の想定外もつくらない働き方は不可能でしょうか。会社にすべてをささげることをやめ、自分を支え、人を支え、命を支える。

 そういう働き方を実現するために、組合がやれることはたくさんあります。労働三権に基づく交渉は今も裁判以上に使えることが多いのです。議論し合えば合意はできる。それこそが本当の組合の闘いです。

 (聞き手・大森雅弥)

 <いとう・みどり> 1952年、長野県生まれ。72年から労働組合で活動。「女性ユニオン東京」「はたらく女性の全国センター」の発足に関わるなど、働く女性に寄り添う活動を続けている。

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