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老舗旅館、求む8代目 淡墨桜近く、故宇野千代さん定宿 

2019/6/12 夕刊

老舗旅館を残そうと後継ぎ候補を探す小野島史郎さん=岐阜県本巣市で

 七代続く岐阜県本巣市根尾市場の老舗旅館「住吉屋」。近くの国天然記念物・淡墨桜の再生保護を訴えた作家・故宇野千代さん(一八九七〜一九九六年)の定宿としても知られるが、後継者がいないのが悩みの種だ。代表の小野島史郎さん(70)は由緒ある旅館を残そうと、市の事業を通じ「地域おこし協力隊員」を対象に後継ぎ候補の公募に乗り出した。

 小野島さんによると、住吉屋の創業時期は定かでないが、江戸末期の可能性があり、濃尾地震(一八九一年)の翌年に再建されたと伝わる。春は近くの淡墨桜が目当ての観光客、初夏は根尾川のアユ釣り客らでにぎわう。故宇野さんは一九六七年に初めて訪れて以降、ほぼ毎年滞在し、代表作「生きて行く私」には住吉屋が実名で登場する。

 七代目の小野島さんは東京都内の大学に進学。大手ホテルグループに就職し、都内でホテル新設などに携わった。当初は家業を継ぐ気はなかったが、六代目の母親が末期がんと分かり、八七年に故郷に戻った。

 改めて見渡すと、地元は豊かな自然で育ったアユ、アマゴ、イワナなど東京ではなかなか手に入らない魚、うまい野菜があふれていた。「この地で旅館業を営む喜びは、そうした食材に触れられること」。母の後を継ぐと改築し、日帰り客にも利用してもらう飲食スペースを設けるなど食べて楽しめる旅館を目指した。

 ただ、地元の森林組合に勤める一人息子(37)は後を継ぐ気持ちがないという。根尾地域は林業の衰退とともに過疎化が進み、旧根尾村時代の七〇年代に三千人以上いた人口は、今は半分以下に。他に若い後継者を見つけるのは難しい。一時は廃業が頭をよぎった。

 そこで、着目したのが市が今年二月に打ち出した「継業チャレンジプロジェクト」。地元で後継者不足に悩む事業主と、都会から地方に移り住んで仕事を見つけたい「地域おこし協力隊員」のマッチングを図る。

 同事業に手を挙げた住吉屋の応募要件は、二十歳以上四十歳未満で、東京、名古屋、大阪の三大都市圏に住み、採用後は本巣市北部で居住すること−など。

 協力隊の任期(最長三年間)中、旅館経営のノウハウや看板メニュー「十割の豆乳そば」の作り方などをみっちり学んでもらう。

 小野島さんによると、旅館経営には客のもてなしはもちろん、細かな物品の発注などさまざまなノウハウが必要。意欲や才能のある若手なら、任期後に後継者として経営を託す考えだ。

 「『ようこそ』という気持ちでもてなせば、たとえ言葉の通じない外国人でも快く迎えることができ、やりがいがある。覚悟のある人にきてほしい」と語る。問い合わせは、本巣市企画財政課=0581(34)5024=へ。

◆事業承継、全国的な課題

 経営者の高齢化などに伴い、中小企業の事業承継は全国的な課題になっている。

 東京商工リサーチの調査によると、休廃業・解散する企業は全国で増加傾向にあり、二〇一八年は前年比14・2%増の約四万六千七百件。経営者で最も多い団塊の世代は、引退の適齢期を迎えている。にもかかわらず、親族などに事業引き継ぎの適任者がいないことが、要因の一つという。

 国は一一〜一六年度、「事業引継ぎ支援センター」を四十七都道府県に設置。後継者のいない企業を対象に、合併・買収(M&A)を仲介する専門機関を紹介したり、各地のセンターと情報共有してマッチング支援をしたりしている。

 一九年版中小企業白書は、年齢を理由に引退を迎える経営者は今後も増えると予想。新たな経営の担い手参入や、さまざまな方策で有用な事業・経営資源を次世代に引き継ぐことが重要、と強調している。

 (秋田佐和子、写真も)

 <地域おこし協力隊> 過疎地などの自治体が、都市部から移住した人を隊員として委嘱する国の制度。2009年度に始まり、18年度は5000人余が各地に派遣され、農林水産業に従事したり、地場産品の開発、PRなどに取り組んだりしている。活動期間は1〜3年で、隊員の報償費や活動費として1人あたり400万円を上限に国が自治体に交付する。任期後もそのまま定住し、地域の活性化に向け活躍することなどが期待されている。

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