脳脊髄液減少症に初診日認定の壁 過少障害年金を改善へ 

2020/1/14 朝刊

 交通事故などが原因で頭痛やめまいを引き起こす「脳脊髄液減少症」の患者に対する障害年金について、本来よりも金額が過少になっていると専門家らによる指摘があり、実務を担当する日本年金機構が、厚生労働省からの要請で運用を改善したことが分かった。

 障害年金は原則として「初診日」から一年半後を「障害認定日」とし、そこから申請が可能となるため、初診日が遅いと判断されるとその分、年金の受取期間が減る。機構は近年、初診日が遅くなるよう認定してきたが、以前と同様に早い日にすることで、その期間分の年金を百万円単位で受け取る人もいるとみられる。

 脳脊髄液減少症は、事故や転倒などの衝撃で頭部の髄液が漏れる病気。潜在的なケースを含めると患者は数十万人とも言われる。障害年金を専門に扱う社会保険労務士らによると、以前は事故などの直後に医療機関にかかった日を初診日とし、障害年金が支給されるケースがほとんどだった。

 ただ、この病気は診断が難しく複数の医療機関を受診した後に判明するなど確定診断に数年かかることもある。機構は近年、確定診断が出た時期を初診日と認定するようになり、その分、支給開始が遅れる例が増え、人によっては受け取れない場合もあったという。

 同様の問題は慢性疲労症候群(CFS)など他の病気でも指摘されており、厚労省は「対応を今後検討する」としている。

◆専門医少なく診断に時間

 脳脊髄液減少症は専門医が少なく、単に頭痛と診断されたり、全身のだるさや集中力低下を伴い、周囲から「怠けている」と誤解されたりすることもあるという。

 障害年金の申請を取り扱い、患者団体を支援している社会保険労務士の白石美佐子さん(愛知県)によると、二〇一四年十二月に交通事故に遭った同県小牧市の男性(60)は二日後に医療機関を受診したが「頭部打撲で頭痛が続く」と判断された。その後、二カ所目の医療機関でも明確な診断はなく、一六年六月の三カ所目でようやく、減少症との確定診断に至った。

 「初診日」について、男性は最初に医療機関にかかった一四年十二月として障害年金を申請したが、日本年金機構は確定診断があった一六年六月と判断。初診日とされた一六年六月は男性は退職しており、会社員らが対象の障害年金を受け取る資格がないとされた。

 しかし今回の見直しで、一四年十二月が初診日となり、受給資格を認められた。二百万円を超える過去の分に加え、今後は年間約五十八万円を受け取れることになったという。

 白石さんは「病気で苦しんでいる人に年金が出ないのはおかしい。改善されて良かった」と話した。

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